自家用車の法定点検を自分でやってみる
自家乗用車の場合、12ヶ月ごとに法定点検が義務付けられている。
法定点検は国土交通省の手引書によると利用者自らが行うことを想定しているが、販売業者や整備工場に1万円余りで依頼することもできる。
以下、2015年(平成27)7月1日版に基づき、自家乗用車で1年ごとに点検が必要な項目を抜粋した。
なお前回の定期点検からの走行距離が 5,000 km に満たない場合、一部の点検項目が省略できる。2回連続省略することはできないが、2年目の場合は専門家による車検も同時に行えばよいだろう。
まずは前回の点検からの走行距離が 5,000 km に満たない場合は次の項目の点検が必須である。
かじ取り装置(ステアリング): パワーステアリング装置
- ベルトの緩みと損傷
- 定められたプーリ間のベルト中央部を手(約 10 kg)で押したとき、たわみ量が規定の範囲にあるかをスケールなどにより点検します。
- ベルト全周にわたって内側、側面に著しい摩耗や損傷、亀裂がないかを目視などにより点検します。
制動装置(ブレーキ): ブレーキペダル
- 遊び、踏み込んだ時の床板との隙間
- エンジン停止状態でブレーキ・ペダルを数回踏み、ブースター内を大気圧にしてから、ブレーキ・ペダルを手で抵抗を感じるまで押し、遊びの量が規定の範囲にあるかをスケールなどにより点検します。
- エンジンをかけた状態でブレーキ・ペダルを強く踏み込んで、ペダルと床板とのすき間が規定の範囲にあるかをスケールなどにより点検します。また、踏みごたえから、エアの混入がないかを点検します。
- ブレーキの効き具合
- 乾燥した路面を走行してブレーキ・ペダルを踏み込んだとき、踏力に応じた制動力が得られ、進行方向にまっすぐに止まることができるかを点検します。
- ブレーキ・テスタで点検する場合は、左右前後輪の制動力の総和及び左右差が規定値にあるかを点検します。
制動装置(ブレーキ): 駐車ブレーキ機構
- 引きしろ(踏みしろ)
- パーキング・ブレーキ・レバー(ペダル)を規定の力で操作したとき、引きしろ(踏みしろ)が、規定のノッチ数(ラチェットがかみ込む音で確認)の範囲にあるか、また、開放時に走行位置に保持されるかを点検します。
- ブレーキの効き具合
- 乾燥した急坂(5分の1(20%)勾配)の路面で、停止状態が保持できるかを点検します。
- ブレーキ・テスタで点検する場合は、制動力が規定値以上あるかを点検します。
制動装置(ブレーキ): ホース及びパイプ
- 漏れ、損傷及び取付状態
- リフト・アップなどの状態で、次の点検を行います。
- ホース、パイプ及び接続部に液漏れや損傷がないかを目視などにより点検します。
- 走行中の振動やハンドル操作などによりパイプ及びホースが車体その他の部分と接触のおそれがないかを目視などにより点検します。
- ホースに劣化によるふくらみ、亀裂及び損傷がないかを目視などにより点検します。
- 接続部及びクランプに緩みなどがないかをスパナなどにより点検します。
- リフト・アップなどの状態で、次の点検を行います。
制動装置(ブレーキ): マスタ・シリンダ、ホイール・シリンダ、ディスク・キャリパ
- 液漏れ
- マスタ・シリンダの周辺から液漏れがないかを目視などにより点検します。
- リフト・アップなどの状態で、ブレーキ・ドラムを取り外し、ホイール・シリンダのブーツ周辺から液漏がないかを目視などにより点検します
- リフト・アップなどの状態で、ホイールを取り外し、ディスク・キャリパの周辺から液漏れがないかを目視などにより点検します。
動力伝達装置: クラッチ MT車
- ペダルの遊び、切れた時の床板とのすき間
- クラッチ・ペダルを手で抵抗を感じるまで押し、遊びの量が規定の範囲にあるかをスケールなどにより点検します。このとき、マスタ・シリンダと一体型の倍力装置付きのクラッチにあっては、エンジンを停止しクラッチ・ペダルを数回踏み込んで、タンク内圧力を大気圧にして点検します。
- レリーズ・フォーク先端を手で動かし、レリーズ・フォーク先端の遊びの量が規定の範囲にあるかをスケールなどにより点検します。(無調整式レリーズ・シリンダの場合は点検は不要です。)
- アイドリング状態でパーキング・ブレーキを確実に作動させ、さらに、ブレーキ・ペダルを踏んだ状態で1速にシフトしてクラッチ・ペダルを徐々に離し、クラッチがつながる直前のクラッチ・ペダルと床板とのすき間(又は、床いっぱいまでクラッチ・ペダルを踏み込んだ位置からのすき間)が規定の範囲にあるかをスケールなどにより点検します。
電気装置: 点火装置
- 点火時期
- エンジン暖機後、規定のアイドリング回転数で、タイミング・ライトなどを用いて、点火時期が適切であるかをクランク・プーリなどの合わせマークを見て点検します。
電気装置: バッテリ
- ターミナル部分の接続状態
- ターミナル部が、緩みや腐食により接続状態が不良でないかを点検します。
原動機(エンジン): 本体
原動機(エンジン): 潤滑装置
- オイル漏れ
- リフト・アップなどの状態で、目視などにより、次の点検を行います。
- シリンダ・ヘッド・カバー、オイル・パン、ドレーン・プラグなどからオイル漏れがないか。
- オイル・クーラ・ホースなどに劣化によるふくらみや亀裂、損傷がないか。
- リフト・アップなどの状態で、目視などにより、次の点検を行います。
原動機(エンジン): 冷却装置
- ファン・ベルトの緩みと損傷
- 定められたプーリ間のベルト中央部を手(約 10 kg)で押したときのたわみ量が、規定の範囲にあるかをスケールなどにより点検します。又は、ベルト・テンション・ゲージ(張力計)を用いてベルトの張力が規定値内にあるかを点検します。
- ベルトの全周にわたっての内側や側面に、摩耗や損傷、亀裂がないかを目視などにより点検します。
- 水漏れ
これに加えて走行距離が 5,000 km を超える場合は次の項目が必須となる。
制動装置(ブレーキ): ブレーキ・ドラム、ブレーキ・シュー
- ドラムとライニングとのすき間
- <自動調整方式> リフト・アップなどの状態で、ブレーキ・ぺダル又はパーキング・ブレーキ・レバーを数回操作し、ブレーキ・シューを安定させた後、タイヤを手で回したとき、引きずりがないかを点検します。
- <手動調整方式> リフト・アップなどの状態で、ブレーキ・ぺダル又はパーキング・ブレーキ・レバーを数回操作し、ブレーキ・シューを安定させた後、点検孔のあるものはシックネス・ゲージにより、又は点検孔のないものはアジャスタにより、すき間を点検します。(ドラムが駐車ブレーキとしてのみ使用される自動車については、駐車ブレーキ機構に異状がなければ、この点検を省略できます。)
- シューの摺動部分及びライニングの磨耗
- ライニングの残量を直接確認できる点検孔を有する構造又はドラム・カバーが取り外せる構造の車両にあっては、次の方法により点検を行うことができます。ただし、点検の結果、ライニングの残量がその使用限度に近づいている場合その他異状が認められる場合は、ドラムを取り外して行います。
- ドラム・カバーを取り外すことにより、又はライニング残量点検孔から、ライニングの残量を目視により点検します。また、ライニングの端面に亀裂、剥離などの損傷がないかを目視などにより点検します。
- 低速で走行中に緩やかにブレーキ・ペダルを踏んだ際に、ブレーキから異音が発生しないかを確認することによってリベット及びボルトの緩みを点検します。
- リフト・アップなどの状態でタイヤを回し、ブレーキ・ペダルを踏んだ状態からペダルを放した際に、すぐにタイヤが回せるかによって、シューの戻り不良(ブレーキの引きずり)がないかを点検します。
- ライニングの残量を直接確認できる点検孔を有する構造又はドラム・カバーが取り外せる構造の車両にあっては、次の方法により点検を行うことができます。ただし、点検の結果、ライニングの残量がその使用限度に近づいている場合その他異状が認められる場合は、ドラムを取り外して行います。
制動装置(ブレーキ): ブレーキ・ディスク及びパッド
- ディスクとパッドとのすき間
- リフト・アップなどの状態で、タイヤを手で回したとき異状な引きずりがないかを点検します。
- パッドの磨耗
- リフト・アップなどの状態で、ホイールを取り外しキャリパ・ボディーの点検孔から、パッドの厚みを点検します。また、必要に応じてスケールなどにより点検します。
走行装置: ホイール
- タイヤの状態
- リフト・アップなどの状態で、次の点検を行います。
- タイヤ・ゲージを用いて、空気圧が規定値であるかを点検します。必要がある場合にはスペア・タイヤについても点検します。
- タイヤの全周にわたり、亀裂や損傷がないか、釘、石及びその他の異物が刺さったり、かみ込んだりしていないか、かつ、偏摩耗などの異常な摩耗がないかを目視などにより点検します。
- タイヤの接地面に設けられているウェア・インジケータ(スリップ・サイン)の表示により点検するか、又はタイヤの接地面の全周にわたり、溝の深さが規定値以上あるかをディプス・ゲージなどにより点検します。
- リフト・アップなどの状態で、次の点検を行います。
- ホイール・ナット及びホイール・ボルトの緩み
- ホイール・ナット、ホイール・ボルトに緩みがないかをホイール・ナット・レンチなどにより点検します。
- リヤ・シャフトの支持方式が全浮動式のものにあっては、アクスル・シャフトの取付けナット及びボルトに緩みがないかを点検します。
動力伝達装置: トランスミッション・トランスファー
- オイル漏れ
- オイル量
- MT車 リフト・アップなどの状態で、トランスミッション及びトランスファのフィラ・プラグを取り外し、プラグ穴に指を入れるなどしてオイル量を点検します。(オイル漏れがなければ、オイル量は正常と判断して、この点検を省略できます。)
- AT車 水平な場所に車両を止め、パーキング・ブレーキを確実に作動させてエンジンを暖機し、アイドリング状態で、ブレーキ・ペダルを踏み込んだ状態でシフト・レバーをゆっくり各レンジにシフトした後Pレンジ(車両によっては、Nレンジ)に戻します。そして、レベル・ゲージによりオイル量を点検します。
- レンジ操作の際、シフト・レバーに異状な重さやがたがなく、ポジション・インジケータの表示と一致しているかを点検します。
動力伝達装置: プロペラ・シャフト、ドライブ・シャフト
- 連結部の緩み
- リフト・アップなどの状態で、プロペラ・シャフトのジョイント・フランジ・ヨーク取付ボルト、ナット、センタ・ベアリング・ブラケット取付ボルトに緩みがないかをスパナなどにより点検します。
- リフト・アップなどの状態で、ドライブ・シャフトの取付ナットに緩みがないかをスパナなどにより点検します。
電気装置: 点火装置
- 点火プラグ(スパーク・プラグ)の状態
- スパーク・プラグ(白金プラグ及びイリジウム・プラグを除く)を取り外し、次の点検を行います。
- 電極に汚れ、損傷及び摩耗がないか、また、絶縁碍子に焼損がないかを目視などにより点検します。
- 中心電極と接地電極とのすき間(プラグ・ギャップ)が規定の範囲にあるかをプラグ・ギャップ・ゲージなどにより点検します。
- スパーク・プラグ(白金プラグ及びイリジウム・プラグを除く)を取り外し、次の点検を行います。
原動機(エンジン): 本体
- エア・クリーナ・エレメントの状態
- エレメントを取り外し、汚れ、詰まり、損傷などがないかを目視などにより点検します。
エグゾースト・パイプとマフラ
- 取付けの緩みと損傷
- リフト・アップなどの状態で、次の点検を行います。
- エグゾースト・パイプ及びマフラの取付部、接続部に緩みがないかを手で揺するなどして点検します。
- エグゾースト・パイプ、マフラ及び遮熱板の取付ボルト、ナットに緩みがないかをスパナなどにより点検します。
- ラバー・ハンガーの劣化や損傷、取付状態を点検します。
- エグゾースト・パイプ、マフラ及び遮熱板に損傷や腐食がないかを点検します。
- エグゾースト・パイプ及びマフラが他の部分との接触のおそれがないかを点検します。
- エンジンを始動し、接続部などより排気ガスが漏れていないかを点検します。
- リフト・アップなどの状態で、次の点検を行います。